数学B / 本質理解型教材
対象:数列の考え方を初めて学ぶ人。到達目標:数列の表現方法と、和の基本的な考え方を日常の言葉で説明できること。
毎月の貯金残高、ローンの返済、うさぎの個体数、階段の登り方のパターン数。これらはすべて「1番目、2番目、3番目…」と番号つきで並ぶ数です。
一つひとつをバラバラに眺めていても、先のことはわかりません。しかし、並び方に隠れた規則を式でつかむことができれば、100番目でも1000番目でも、その瞬間の状態をいきなり見通せるようになります。未来を予測し、複雑な合計を一瞬で計算するための土台がここにあります。
数学では、この背番号を \(n\) で表し、対応する数を \(a_n\) のように表します。規則の書き方には、いきなり \(n\) 番目の数を示す「一般項」と、前の数から次の数を作るルールを示す「漸化式」の2つがあります。
毎回同じ数ずつ増えていく(または減っていく)並びをと呼びます。スタートの数を、足していく数をといいます。
この数列の \(n\) 番目の数を求める公式は、次の通りです。
公式の中の \(n-1\) が最大のポイントです。1番目の数から出発して \(n\) 番目の数にたどり着くまでに、公差を足した「回数」は、背番号の数より1回少ない \(n-1\) 回になります。これは道路に並ぶ電柱の間隔を数えるのと同じ仕組みです。
毎回同じ倍率で掛け算されていく並びをと呼びます。スタートの数(初項)に掛け合わせる倍率をといいます。
等差数列が「足し算の繰り返し」だったのに対し、等比数列は「掛け算の繰り返し(指数関数)」の世界です。ここでも、掛ける回数は背番号より1回少ない \(n-1\) 回になります。
紙を半分に折りたたむと、厚さは等比数列的に増えます。厚さ 0.1mm の紙でも、26回折るだけで \(0.1\text{mm} \times 2^{26} \approx 6.7\text{km}\) となり、世界最高峰のエベレストに迫る高さになります。
数列のたくさんの数をすべて足し合わせたいとき、活躍するのが という記号です。見た目は難しそうですが、中身はただの「足し算の指示書」にすぎません。
下にある \(k=1\) は「背番号 1 からスタートせよ」、上にある \(4\) は「背番号 4 でストップせよ」という意味です。そして右にある式に背番号を順に当てはめて、全部足します。記号の形に惑わされず、単なる長い足し算の省略形だと捉えましょう。
等差数列の和を求めるときは、ガウス少年が考え出した「逆さにして足す」アイデアを使います。1から100まで足すとき、それを逆向きに並べた100から1までとペアにして縦に足すと、すべて「101」になります。
これは、階段状に並んだ数を、もうひとつの逆さ階段と組み合わせて「幅が個数、高さが(最初+最後)」の長方形を作ることに相当します。2つの同じ階段を合わせたので、最後に 2 で割ることで、元の和が求められます。
等比数列の和は、「ずらすと消える」という構造を利用して計算します。全体の和 \(S\) から、公比を掛けた \(rS\) を作って引き算をすると、最初と最後を除く途中の項がすべて相殺されて消えてしまいます。
以下のシミュレーターで公比 \(r\) を動かしてみましょう。公比が 1 より小さい場合(\(r < 1\))、どれだけ項を足し合わせても、和がある値に頭打ち(収束)していく様子が視覚的にわかります。
そのままでは規則が見えない数列でも、隣り合う数の「引き算の答え(差)」を並べると、そこに新しい規則(等差や等比)が見えてくることがあります。この差の数列をといいます。
「データの変化の仕方を観察することで、元のデータの性質を暴く」というアプローチは、数学における「微分」の基本的な考え方と同じです。
「次の数は、前の数を使ってどう作るか」という関係を示したルールをと呼びます。
たとえば \(a_{n+1} = a_n + d\) は「前と同じ数を足す(等差)」、 \(a_{n+1} = r a_n\) は「前に同じ倍率を掛ける(等比)」というルールを数式にしたものです。
全体の姿(一般項)がすぐに見えなくても、「隣の関係」さえ決まれば、数はドミノのように次々と決まっていきます。これこそが、現実の複雑なシミュレーションを可能にする強力な武器です。
無限にある背番号すべてで「ある主張」が絶対に成り立つと証明するにはどうすればよいでしょうか。そこで使われるのがです。
やることはドミノ倒しと同じで、以下の2つの手順を確認するだけです。
この2ステップをクリアすれば、無限の彼方までドミノがすべて倒れきること(すべての \(n\) で成り立つこと)を証明できます。
漸化式(一歩ずつの足元を見るルール)から一般項(ジャンプして未来を見る式)へ変形することができれば、シミュレーションを繰り返すことなく、知りたい未来の値を一瞬で手に入れることができます。
※試験等で登場する「特性方程式」などの様々な漸化式の解き方パターンは、この2つの表現を行き来するためのテクニックにあたります。
番号のついた数(数列)
↓
等差・等比の規則性(一般項)
↓
すべて足し合わせる(和・Σ・ずらして引く)
↓
隣との関係で規則を書く(漸化式・数学的帰納法)